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デービット・アトキンソン「国運の分岐点」 ~中小企業は経済成長の足かせ~・・・反論:大企業の高い生産性は見せかけ
3・大企業の高い生産性はみせかけ
4・規模の経済の追求は時代遅れ
3回のうち2回目の反論内容をあげていきます。
以下、中小企業家同友会全国協議会で地域経済学のブレーンになってもらっている
島澤諭氏 (公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長)の講演の要約です。
・・・・『真の生産性改善』は中小企業が担ってきた
90年代以降の大企業の労働生産性は従業員要因(雇用削減)と
売上高要因(売上高維持)によって 押し上げられている。
つまり、大規模製造業の労働生産性改善は、 『偽りの生産性改善』に過ぎない。
しかも、大規模製造業では、1990年以前と以後とでは
付加価値率要因が急減速しているという事実も、
『真の生産性改善』を実現できなかった点を裏付けている。
中小企業は、雇用を増やし、付加価値も増やしている。
中小企業では、付加価値要因がプラスに寄与しつつ、雇用を増やしている。
つまり、デフレ不況が長引く中で、日本経済をけん引し、
雇用の下支えをしてきたのは、
大企業製造業というよりは、中小企業に他ならない。
アトキンソン氏の「大企業ほど労働生産性が高い」「日本経済のけん引役」という認識は誤りである。
中小企業庁も中小企業の労働生産性の伸びには太鼓判を押している。
「中小企業の実質労働生産性の伸び率は、大企業と比較しても遜色ない。」
一方で、「価格転嫁力の伸び率がマイナスであるため、 名目で見た労働生産性の伸び率が低くなっている。発注側事業者との取引条件の改善が重要」と、核心を突いている。
日本の生産性の問題は、 中小企業の問題というよりは、
わが国の下請けや中間搾取の構造問題であり、
こうした問題にメスを入れない限り、
『真の生産性改善』を実践している中小企業が飛躍する機会が得られない。
逆に、アトキンソン氏の主張とおりに、
『真の生産性改善』を実現している中小企業を整理淘汰するのは、
日本経済の土台を切り崩し、弱体化させるだけだ。
規模の経済を求めるためには、大量に生産できる機械や設備に投資する必要投資が
大きければ規模の経済性も大きくなるが、その分失敗した時のリスクも大きくなる。
→合併・整理淘汰して、企業規模拡大!
規模の経済は大装置型産業で働きやすい。コスト競争型。
日本の半導体産業の凋落は一つの例である。
需要の規模は小さいが利益率は高いニッチな商品を主力とする企業にとって、
大規模 化はむしろ生産性を下げる危険性が高い。
各社がそれぞれのビジネスにとって、より良い状態を模索した結果、
現在の企業規模に 落ち着いていると考えるべき。
中小企業の雇用数減少分を大企業が吸収するのは一部だけ
日本の労働市場は事実上、
内部労働市場を形成する大企業部門の労働市場と
中小企業部門の労働市場とに分断されており、
中小企業から大企業への転職が極めて困難なことは周知の事実です。
それにも拘わらず、中小企業数を激減させ、
その従業員を高給の大企業に吸収させることによって生産性を高めることができる。
と、いう著者の主張は、いかに絵空事であるかは明白です。
(青山学院大学名誉教授 港徹雄先生論文より)
中小企業の統廃業による規模経済性は期待できない
中小企業が大企業に比較して負担が大きいのは資本(設備投資)ではなく賃金です。
実際、2019年の労働分配率は大企業が56.7%であるのに対して、
中小企業は72.9%です(出所:商工総研『図説 日本の中小企業2020/2021』P.64)。
また、小零細企業はその生産工程も狭い範囲に限定されているので、
分業拡大の余地は小さく、さらに、小零細企業間では、
その経営資源(人材、技術及び販路)の同質性が高いため、
統合によるシナジー効果も期待できません。
したがって、小零細企業の統廃業による規模の経済性や範囲の経済性はあまり期待できません。
4・規模の経済の追求は時代遅れ
3回のうち2回目の反論内容をあげていきます。
以下、中小企業家同友会全国協議会で地域経済学のブレーンになってもらっている
島澤諭氏 (公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長)の講演の要約です。
3・大企業の高い生産性はみせかけ
・・・・『真の生産性改善』は中小企業が担ってきた
90年代以降の大企業の労働生産性は従業員要因(雇用削減)と
売上高要因(売上高維持)によって 押し上げられている。
つまり、大規模製造業の労働生産性改善は、 『偽りの生産性改善』に過ぎない。
しかも、大規模製造業では、1990年以前と以後とでは
付加価値率要因が急減速しているという事実も、
『真の生産性改善』を実現できなかった点を裏付けている。
中小企業は、雇用を増やし、付加価値も増やしている。
中小企業では、付加価値要因がプラスに寄与しつつ、雇用を増やしている。
つまり、デフレ不況が長引く中で、日本経済をけん引し、
雇用の下支えをしてきたのは、
大企業製造業というよりは、中小企業に他ならない。
アトキンソン氏の「大企業ほど労働生産性が高い」「日本経済のけん引役」という認識は誤りである。
中小企業庁も中小企業の労働生産性の伸びには太鼓判を押している。
「中小企業の実質労働生産性の伸び率は、大企業と比較しても遜色ない。」
一方で、「価格転嫁力の伸び率がマイナスであるため、 名目で見た労働生産性の伸び率が低くなっている。発注側事業者との取引条件の改善が重要」と、核心を突いている。
日本の生産性の問題は、 中小企業の問題というよりは、
わが国の下請けや中間搾取の構造問題であり、
こうした問題にメスを入れない限り、
『真の生産性改善』を実践している中小企業が飛躍する機会が得られない。
逆に、アトキンソン氏の主張とおりに、
『真の生産性改善』を実現している中小企業を整理淘汰するのは、
日本経済の土台を切り崩し、弱体化させるだけだ。
4・規模の経済の追求は時代遅れ
規模の経済を求めるためには、大量に生産できる機械や設備に投資する必要投資が
大きければ規模の経済性も大きくなるが、その分失敗した時のリスクも大きくなる。
→合併・整理淘汰して、企業規模拡大!
規模の経済は大装置型産業で働きやすい。コスト競争型。
日本の半導体産業の凋落は一つの例である。
需要の規模は小さいが利益率は高いニッチな商品を主力とする企業にとって、
大規模 化はむしろ生産性を下げる危険性が高い。
各社がそれぞれのビジネスにとって、より良い状態を模索した結果、
現在の企業規模に 落ち着いていると考えるべき。
中小企業の雇用数減少分を大企業が吸収するのは一部だけ
日本の労働市場は事実上、
内部労働市場を形成する大企業部門の労働市場と
中小企業部門の労働市場とに分断されており、
中小企業から大企業への転職が極めて困難なことは周知の事実です。
それにも拘わらず、中小企業数を激減させ、
その従業員を高給の大企業に吸収させることによって生産性を高めることができる。
と、いう著者の主張は、いかに絵空事であるかは明白です。
(青山学院大学名誉教授 港徹雄先生論文より)
中小企業の統廃業による規模経済性は期待できない
中小企業が大企業に比較して負担が大きいのは資本(設備投資)ではなく賃金です。
実際、2019年の労働分配率は大企業が56.7%であるのに対して、
中小企業は72.9%です(出所:商工総研『図説 日本の中小企業2020/2021』P.64)。
また、小零細企業はその生産工程も狭い範囲に限定されているので、
分業拡大の余地は小さく、さらに、小零細企業間では、
その経営資源(人材、技術及び販路)の同質性が高いため、
統合によるシナジー効果も期待できません。
したがって、小零細企業の統廃業による規模の経済性や範囲の経済性はあまり期待できません。
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