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デービット・アトキンソン「国運の分岐点」~中小企業は経済成長の足かせ~・・・反論:労働生産性そのもには意味がない
3回にわたって、反論の内容をあげていきます。
1・労働生産性低迷の主張には根拠がない
2・真の労働生産性を探求していこう
中小企業家同友会全国協議会で地域経済学のブレーンになってもらっている
島澤諭氏 (公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長)の講演の要約です。
・・・・より正確なエビデンスに基づけば日本の労働生産性は上昇している。
デービット・アトキンソンのいう「生産性」は下記の定義だ。
生産性=一人当たりのGDP
これだけでは不正確であり、もう一方の「労働生産性」という要素もある。
労働生産性=付加価値総額/労働者数
人口減少、高齢化、労働時間の削減はGDPを引き下げてしまうので、
労働生産性を引き上げなければGDPを維持できないという問題意識は理解できる。
しかし、以下の3つの視点が欠けている。
①労働時間を考慮していない
アトキンソン氏の労働生産性には労働時間の観点がないので、
昨今の労働時間削減の影響が考慮されていない。
時間当たりではリーマンショック以降上昇基調にある。
②物価調整を考慮していない
物価を調整したより経済学的に正しい労働生産性(時間当たり)でみると、
実は日本の労働生産性は低迷していないどころか、増加している。
物価調整前で見た労働生産性が低迷しているのはデフレが原因であると考えられる。
物価調整後の労働生産性が下がっているのは、
労働時間削(残業削減)が考慮されていないから。
③GDPを一人当たりGDPでみていない
労働生産性は、一 人当たりGDPを維持する手段であったが、
アトキンソン氏の場合、一人当たりGDPよりもGDPそのものを重視している。
・・・・全要素生産性が大事
労働生産性は、労働者が1時間当たりどれだけ生産を行っているか
(いくら稼いでいるか)を表しているが、
そもそも生産は労働投入だけで行われるのではない。
機械設備も使えば、経営者の手腕も影響 する。
経済学の世界では、労働力、資本ストック、技術(インプット)を用いて、
生産 (アウトプット)が行われていると考える(生産関数)。
つまり、労働力に着目したのが労働生産性(生産額÷労働投入量)に過ぎず、
その他に、資本ストック に着目した資本生産性(生産額÷資本投 入量)というものがある。
『真の労働生産性改善』と『偽りの生産性改善』
日本経済を再興し、国民の生活を守るため に、中小企業の経営者に求められるのは、
『真の労働生産性』(労働生産性ではない)向上に努めること。
『真の労働生産性改善』とは、雇用を増やしつつ、付加価値を上げることです。
逆に、(日本経済や国民生活に与えるダメージの大きさという点で)
もっとも望ましくないのは、雇用を削減し、人件費を減らす方法。
これを『偽りの労働生産性改善』と呼ぶ。
『偽りの生産性改善』は、売上高に変化はなくとも雇用を削減して人件費をカットすれば実現可能。
一方、真の生産性改善は、新技術や新商品の開発、人材教育などによらなければ実現不可能。
経済学の世界では、生産性は、労働生産性、 資本生産性、全要素生産性の3つがある。
そして、国の経済成長と国民の生活水準を考えるうえで一番重要なのは全要素生産性である。
※全要素生産性を一言で言うと、固定費が一定でも付加価値が増えることを言う。
労働・資本に加えて技術革新・業務効率化・規制緩和・ブランド価値などあらゆる生産要素の投入量と産出量の関係を示すものである。
技術革新など労働や資本以外の要素は定量的に計測することが困難なため、全要素生産性の伸び率は、実質GDP成長率などで把握される生産量の伸び率から資本および労働の投入量の増加による伸び率を差し引いた残差として算出される。
全要素生産性は、経済成長の要因のうち、技術の進歩や生産の効率化など、資本や労働の量的変化では説明できない部分の寄与度を示すものとして用いられている。
「生産性」という一般的指標だけで、「中小企業は経済成長の足かせ」を論じている。
「生産性」指標を多面的に探求していかなければ、「中小企業は経済成長の足かせ」とは一概に言えない。
1・労働生産性低迷の主張には根拠がない
2・真の労働生産性を探求していこう
中小企業家同友会全国協議会で地域経済学のブレーンになってもらっている
島澤諭氏 (公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長)の講演の要約です。
1 労働生産性低迷の主張には根拠がない
・・・・より正確なエビデンスに基づけば日本の労働生産性は上昇している。
デービット・アトキンソンのいう「生産性」は下記の定義だ。
生産性=一人当たりのGDP
これだけでは不正確であり、もう一方の「労働生産性」という要素もある。
労働生産性=付加価値総額/労働者数
人口減少、高齢化、労働時間の削減はGDPを引き下げてしまうので、
労働生産性を引き上げなければGDPを維持できないという問題意識は理解できる。
しかし、以下の3つの視点が欠けている。
①労働時間を考慮していない
アトキンソン氏の労働生産性には労働時間の観点がないので、
昨今の労働時間削減の影響が考慮されていない。
時間当たりではリーマンショック以降上昇基調にある。
②物価調整を考慮していない
物価を調整したより経済学的に正しい労働生産性(時間当たり)でみると、
実は日本の労働生産性は低迷していないどころか、増加している。
物価調整前で見た労働生産性が低迷しているのはデフレが原因であると考えられる。
物価調整後の労働生産性が下がっているのは、
労働時間削(残業削減)が考慮されていないから。
③GDPを一人当たりGDPでみていない
労働生産性は、一 人当たりGDPを維持する手段であったが、
アトキンソン氏の場合、一人当たりGDPよりもGDPそのものを重視している。
2・真の労働生産性を探求していこう
・・・・全要素生産性が大事
労働生産性は、労働者が1時間当たりどれだけ生産を行っているか
(いくら稼いでいるか)を表しているが、
そもそも生産は労働投入だけで行われるのではない。
機械設備も使えば、経営者の手腕も影響 する。
経済学の世界では、労働力、資本ストック、技術(インプット)を用いて、
生産 (アウトプット)が行われていると考える(生産関数)。
つまり、労働力に着目したのが労働生産性(生産額÷労働投入量)に過ぎず、
その他に、資本ストック に着目した資本生産性(生産額÷資本投 入量)というものがある。
『真の労働生産性改善』と『偽りの生産性改善』
日本経済を再興し、国民の生活を守るため に、中小企業の経営者に求められるのは、
『真の労働生産性』(労働生産性ではない)向上に努めること。
『真の労働生産性改善』とは、雇用を増やしつつ、付加価値を上げることです。
逆に、(日本経済や国民生活に与えるダメージの大きさという点で)
もっとも望ましくないのは、雇用を削減し、人件費を減らす方法。
これを『偽りの労働生産性改善』と呼ぶ。
『偽りの生産性改善』は、売上高に変化はなくとも雇用を削減して人件費をカットすれば実現可能。
一方、真の生産性改善は、新技術や新商品の開発、人材教育などによらなければ実現不可能。
経済学の世界では、生産性は、労働生産性、 資本生産性、全要素生産性の3つがある。
そして、国の経済成長と国民の生活水準を考えるうえで一番重要なのは全要素生産性である。
※全要素生産性を一言で言うと、固定費が一定でも付加価値が増えることを言う。
労働・資本に加えて技術革新・業務効率化・規制緩和・ブランド価値などあらゆる生産要素の投入量と産出量の関係を示すものである。
技術革新など労働や資本以外の要素は定量的に計測することが困難なため、全要素生産性の伸び率は、実質GDP成長率などで把握される生産量の伸び率から資本および労働の投入量の増加による伸び率を差し引いた残差として算出される。
全要素生産性は、経済成長の要因のうち、技術の進歩や生産の効率化など、資本や労働の量的変化では説明できない部分の寄与度を示すものとして用いられている。
「生産性」という一般的指標だけで、「中小企業は経済成長の足かせ」を論じている。
「生産性」指標を多面的に探求していかなければ、「中小企業は経済成長の足かせ」とは一概に言えない。
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