愉快な経営者
オリザさん、文化・芸術・観光で豊岡市創生に挑戦
目次
- ○ 1.「社会価値を経済価値の両立」CSV(Creating Shared Value)の視点で生まれた「コウノトリを育む米」
- ○ 2.城崎温泉街に外国人アーティストが増え、まちは変わりはじめた。
- ○ 3.こどもたちのコミュニケーション能力が高まりはじめた。
- ○ 4.豊岡市に大学を設置
- ○ 5.オリザさんの源流
1.「社会価値を経済価値の両立」CSV(Creating Shared Value)の視点で生まれた「コウノトリを育む米」
豊岡市はコウノトリで名をはせた自治体だ。完全肉食のコウノトリが生きていきやすい環境をつくるために、田んぼにドジョウやカエルが生息できるように無農薬の田んぼを地域ぐるみで増やしいくことに挑戦してきた。
そこで生まれた無農薬・減農薬米を「コウノトリを育む米」としてブランド化し、高価格で流通させることに成功した、「社会価値と経済価値の両立」をさせた町である。
2.城崎温泉街に外国人アーティストが増え、まちは変わりはじめた。
4年前の冬に逢った時の写真
次に目をつけたのがアートだった。
豊岡市は文化芸術でまちを創生させていく方向に舵をきりはじめた。
豊岡市長が本気で取り組む覚悟を感じたオリザさんは豊岡市へ移住を決意する。
先ず手掛けたのは、城崎温泉街にある県立城崎大会議館だった。かつて、私もオリザさんと尋ねて見学に行ったことがある。
年間3-4日程度しか稼働しないお荷物施設を城崎国際アートセンターにリニューアルさせた。このアートセンターのコンセプトは、『舞台芸術を中心に活動する芸術家集団が、1-3ヶ月程度長期滞在して、作品制作が行えるレジデンス施設』です。変貌させた結果、施設の年間稼働日数は350日程度にまで飛躍的に上がった。
結果、まちに多様性が醸成されはじめた。老若男女が英語を学びはじめる風土が芽生えはじめたらしい。
その仕組みに面白さを感じた。利用料はすべて無料。しかし、アーティストが暮らしていくので、豊岡市のまちには生活費が落ちることになり、施設利用料くらいの金額はカバーできる。それだけのインバウンド効果はあるということだった。
3.こどもたちのコミュニケーション能力が高まりはじめた。
更に興味関心を引いたのは、芸術家が常時生活することの付加価値だった。滞在成果として制作した作品を地域に無料で公開してもらうことを約束するらしい。今や、豊岡市内の小中学校全校の子供たちに鑑賞させることを教育プログラムに組み入れている。
どんな効果があるのかというと、「わからないもの」にふれることから対話をはじめることによって、「コミュニケーション能力」が高くなっていくらしい。
具体的に子供達にはこんな能力が高まっていくらしい。
・対話をしていくときに、友達の話や意見を最後まで聞くことができる。
・対話をしながら、友達の考えを受けとめて、自分の考えを持つことができるようになる。
・学級会等の話し合い活動の場面で、自分とは異なる意見や少数意見の良さを活かしたり、折り合いをつけたりして意見をまとめる能力。等々
コミュニケーション不全の多くはコンテクスト【文脈、言葉の解釈】のずれから起こる。
例えば、ある人が「犬」と言ったとしたときに、本人は「土佐犬」のような大きな犬のつもりで話していても、聞く人は「マルチーズ」のような小さい犬をイメージして聞いているかもしれない。ここに言葉の解釈に齟齬が生じはじめてコミュニケーション不全が起こりはじめる。職場や日常で、会話の多くにこのような例がある。
言葉を定義して、論理的に話すことも大事であるが、それと同じくらい論理的に喋れない人の言葉に耳を傾ける能力も必要ですね、これからは。と、オリザさんは笑顔で語りかけてくる。
演劇を通してコミュニケーション教育に力を入れはじめた豊岡市の教育改革に、少々大袈裟な言い方になるが私は日本の未来をかけていきます。と、笑いながら大真面目に私達にぶつけてきます。
4.豊岡市に大学を設置
オリザさんの描く物語はさらにボルテージが上がっていく。
芸術・文化と観光をつないで、豊岡市の経済を創りはじめていると語りはじめた。
芸術・文化と観光という2つのKEYWORDで豊岡という地域を、
日本に来たら必ず行きたくなる参加滞在型のまちにする。
夫婦で楽しめるジャズバーのあるまち、
家族で鑑賞できるミュージカルのあるまちに育てて、
芸術・文化・観光で経済を創っていく。
その実現に向けて物語をつくりはじめている。
その核にとなるのが、日本の公立大学ではじめて演劇学部を持つ兵庫県立豊岡芸術文化観光専門職大学だ、
この話題に入ると、俄然熱をおびはじめ饒舌になっていく、オリザさん。
芸術家を育てるというよりは、芸術文化観光の視点を生かして地域の活力を創出する専門職業人の育成に注力していると感じた。
地域に何が必要なのか考えさせる人材
地域を如何に楽しませるかを考えさせる人材
・・・・を育成することを目指していく。
その過程で大切にしていきたいバリューは・・・
・様々な矛盾と向きあい、ゆっくり悩む時間を大切にしよう。
・多様な選択と決定を受けとめる寛容な感性を育もう。
・知らない世界、知らない自分への冒険を楽しもう。
・他者との違いから学び合い、責任をもって行動する知性を養おう。
・・・・・「ネガティブ・ケイパビリティ」の価値そのものだ。
ネガティブ・ケイパビリティに移動
豊岡のまちそのものをナラティブアプローチで新しい価値あるまちにしていこう。
地域の人達と共に文化芸術観光都市豊岡にしていきたい。
と、語るオリザさん、地域の人達と共にまちを創りあげていこうとする愉快な経営者に見えてきた。
5.オリザさんの源流
なぜ、こんな哲学をオリザさんが持たれたのかを知りたくなった。
昔、豊岡市に東井義雄という教育学者がいた。この人の言葉に影響を受けたということだった。
**********以下、東井義雄著 「村を育てる力」引用*********
『「おやおやとおどろけ。なぜ?と、不思議がれ。わかるまで調べろ。こうかもしれないぞと考えろ。こうしたらどうなるだろうかと考えてやってみろ。いつでもどこでもそうかと、確かめてみろ。」
人間は好奇心を持った猿だ。野生の動物は、子供時代には好奇心はあるが、それを早くに失っていく。人間だけが成長した後も好奇心を持ち続ける。
「おやおやとおどろく」心を、高校大学になっても持続させるような教育を考えなければならない。「なぜ?と不思議がる」授業、「こうかもしれないぞと考える」試験を手間暇かけてつくっていく。何もわからない未来に向けて、私達が子供たちにしてあげられることは、おそらくそれしかない。』(東井義雄著 村を育てる力)
************引用、ここまで*******************
これがオリザさんの哲学の源流だと知りました。
まちづくりを手掛ける愉快な経営者です、オリザさんは。
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